
こんにちは、Gene-K です
人類史上における進化は、誰かの革新的な思考と行動によってもたらされています。
その時点では異質で狂気にさえ思える思想や取り組みは、後に社会を正しい方向へと動かすムーブメントを引き起こすきっかけにもなりました。
そして、その多くは文化活動と切っても切れない関係を築き上げ、大衆の不満や共感をエネルギーに変換し、時に爆発的な勢いで創造と破壊を引き起こしてきました。
前回に引き続き、歴史上の思想家や作家などの文化人と、パンク文化のルーツについて探究します。

パンクムーブメントとルーツ
パンクムーブメントとは、1970年代半ばから始まった音楽やファッション、思想などのサブカルチャーの総称です。
パンクの音楽的ルーツは、1960年代のガレージロックやブリティッシュ・インヴェイジョン、1970年代のパブロックなどにあります。
パンクの思想的ルーツは、反体制的なスタンスや政治的理想主義を拒絶することにあります。そして、パンクと歴史上の思想家や作家など文化人との関係(ルーツ)を考えるときには、以下のような点が考えられます。
◉ パンクは、ニヒリズムやアナキズムなどの思想に影響を受けており、それらの思想家や作家と共通点が見られます。例えば、ニーチェやカミュ、ドストエフスキーなどです。
◉ パンクは、DIY(Do It Yourself)精神を重視しており、自分たちで音楽や雑誌を作ったり、ライブハウスを運営したりしました。これはロマン主義や前衛芸術などの文化運動とも関連があります。例えば、ボードレールやランボー、ダダイズムなどです。
◉パンクは、社会的不平等や差別に対して抵抗する姿勢を示しており、それらに取り組んだ思想家や作家とも共感が生まれました。例えば、マルクスやエンゲルス、オーウェルなどです。
また、パンクは音楽やファッションだけでなく、芸術の分野にも大きな影響を与えました。
◉ パンクの美学は、アンダーグラウンド、ミニマル・アート、聖像破壊的、風刺的なものが好まれるという特徴があります。パンクは様々な芸術的ムーブメントとも関連があります。
◉ パンクは、現代アートとロックから派生したサブカルチャーであり、「相互扶助」「積極的自由」「自主管理」などの倫理を持っています。
◉ パンクは、Year Zeroというマニフェストを掲げて、メインストリームの音楽や文化を破壊することを目指しました。
パンクは、芸術大学や芸術の世界に関連を持つバンドも多く存在しました。例えば、ニューヨーク・ドールズやテレヴィジョン、パティ・スミス、初期のディーヴォなどです。

アンディー・ウォーホルは、アメリカの画家・版画家・芸術家でポップアートの旗手です。彼はロックバンドのプロデュースや映画製作などにも関わりました。パンクというサブカルチャーは、パンクロックを中心としており、歪みの激しいギターと騒々しいリズム・セクションを伴った音楽が特徴です。
ウォーホルとパンクの最も有名な関係は、彼がプロデュースしたバンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドです。このバンドは、エキセントリックな歌姫ニコを加えて、ウォーホルのマルチメディア・イベント「Exploding Plastic Inevitable」に参加しました。このイベントでは、ウォーホルの映画やライトショーと共に、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドが演奏しました。彼らの音楽は、ドラッグやセックスや暴力などのタブーなテーマを扱っており、後のパンクやオルタナティブ・ロックに大きな影響を与えました。

チャールズ・チャップリンは、イギリス出身の映画俳優・映画監督・脚本家・映画プロデューサー・作曲家で、サイレント映画時代に名声を博した喜劇王です。彼は自伝「若き日々」で、貧困や苦労に満ちた幼少期や青年期を赤裸々に綴っています。
パンクカルチャーは、パンクロックを中心とした反体制的なサブカルチャーで、1970年代後半から1980年代初頭にかけて隆盛しました。パンクは社会の不条理や不正義に対して怒りや不満を表現する音楽やファッションやアートを生み出しました。
例えば、チャップリンとパンクカルチャーの関係性は、以下のような点が挙げられます。
チャップリンの作品は、権力者や支配者に対する皮肉や批判が込められており、パンクの精神と共通する部分があります。例えば、ヒトラーの風刺とナショナリズムに反対する感動的な演説で有名な映画「独裁者」、戦争と資本主義を批判した「殺人狂時代」、「モダン・タイムス」では資本主義社会の矛盾を、「ライムライト」では芸能界の冷酷さを描いています。
チャップリンの映画からは、明白な政治的メッセージが笑いと一緒にすんなり心の中の深くに入り込んできました。当時、中学生だった私にとってそれは、学校の難解な教科書よりも、いとも簡単に腑に落ちました。しかし、これは同時に、プロパガンダ(特定の思想によって個人や集団に影響を与え、その行動を意図した方向へ仕向けようとする宣伝活動:三省堂より引用)の強さと怖さを学ぶきっかけにもなりました。
チャップリンは、自らの信念に基づいて作品を作り続けたことで、アメリカ政府から共産主義者として迫害されました。彼は1952年にアメリカから追放され、その後スイスで暮らしました。このような経験は、パンクが抱く反体制的な姿勢と重なります。
パンクカルチャーの中でも特にアナキズムと関連すシーンでは、チャップリンのキャラクター「放浪者」がシンボルとして使われることがあります。
例えば、パンクバンド「The Clash」のジョー・ストラマーや「Crass」のメンバーが放浪者のコスチュームを着用したことがありました。「放浪者」は社会から孤立した存在でありながらも自由奔放で人情味あるキャラクターであり、アナキストたちの理想像と一致します。
他にもパンクカルチャーに影響を与えた人物はたくさんいます。続きはまた次回。
